ご無沙汰しています、ストーリーライダーズ武田です。
前回、永川さんが「カズキ語」について解説していましたが、
読みながら爆笑してしまいました。
カズキのセリフができるまでに、あんなに行程を重ねているんですね…。
(*実は僕はカズキを担当していないので
ほとんどセリフを書いたことがありません。
なので、カズキ担当の方の苦労を知らなかった…)
まるで翻訳、翻訳の繰り返しみたいな…ひとつのセリフだけでも時間がかかる!!
まったく、脚本家泣かせとはこのキャラのことですよ、ほんと。
で、ふと、そういえば、なんでカズキってあんなキャラになったんだっけ?
と思い出しまして…
元々からあんなヘンテコキャラだったわけではないはず。
でも、あんなおかしなことになってしまった…。
というのも、どこかのタイミングで「カズキをいじろう」という雰囲気が
スタッフ内に起こったわけで、それがいつだったかなぁと思い起こしたら、
おぼろげながら思い出しました!!
そう、あれはまだ設定とかキャラクターとかしっかり決まってない段で行われた
第1回スタッフ会議(中野での徹夜会議)のことです。
その時、すでにpakoさんからのイラストは上がっていて、
キャラクターのビジュアルは見えていたのですが、
性格付けをどうするかって話になったんです。
で、ひとりひとり決めて行こうという流れの中で、
ヨウスケ、タクトはバンドでもボーカル、ギター担当、
放っておいても主役級のメンバーだね、
クールで無口なら何をやっても様になるよ!
ってことですんなり決定。
そして、ユゥジ。
年長者なのでお兄さんキャラだね、責任感ある大人の立ち位置にすれば
自然と立つはずだ!
ということで全員一致。
で、ヒロくん。小柄でちょっとなよっとしてるけど、
こういう母性本能くすぐる立ち位置は重要! (女性陣の強い主張だった気が…)
ということでFIX。
で、ヒジリ。
ビジュアルは色黒、だったら、わかりやすくチャラ男にしちゃおう!
でも、ただのチャラ男はいや!
熱いものを秘めたミステリアスさは欲しい!(これも女性陣のあくなき希望)
で、「チャラいけど、実は心に過去を持つ男」という
深い~キャラにすれば格好いいじゃん!
ということで決定!
そんなこんなでメンバーのキャラがスムーズに決まっていきました。
しかし、最後に残ったカズキに関してだけは、
なぜかみんな寡黙になったのです。
もちろん、pakoさんのイラストは上がっていたので、
そこから逆算すればいいのですが、
すでにビジュアルの時点で一癖も二癖もある。
下手に触ると大火傷しそうな雰囲気が漂っていまして…。
無口なのか、クールなのか、おしゃべりなのか、三枚目なのか。
絵から想像するに全てが当てはまりそうで、当てはまらなそう…
非常に不可解なキャラだったのです。
そんななか、誰かが「カズキって、水着着させたらどんな水着だろう?」
と質問をしました。
それに対し、全員口を揃えて、
「ブーメラン!」
と答えたのです。記憶するに、その時点から何かが弾けたように思います。
このご時世、際どいブーメランを履く人間なんてもはや絶滅危惧品種です。
しかも、pakoさんがその場で例として描いたブーメランパンツのイラストは、
シースルーのスケスケでした。
もはや、カズキの変質性が決まったようなもんです。
そこからは足し算、足し算で、
・普段の服装がおかしい。独りだけ派手なビジュアル系で調和を乱す。
・ナルシストだけどそれがどこかズレているので、一般人には理解されない。
・一見モテそうだけど、しゃべると駄目なタイプ。
「黙っていれば…」とよく言われる。
などなどいろんな意見が飛び交い、キャラが膨らんで行きました。
しかし、そこで今度は、
「なんで彼はこんな人間になってしまったのか?彼の生い立ちに何があった?」
という疑問が生まれました。
つまり、彼の過去を作らなければならなくなったのです。
そこで、母親に女の子の服を無理矢理着せられていたから(三島由紀夫風)など
彼の過去について癖のある意見が吟味されました。
しかし、ヒジリの過去が結構重たいので、
それ以上のヘビーさや癖のあるのはちょっと…
という女子の意見もあり、そこで提案されたのが、
「実はすごく普通な奴。それがコンプレックスで意識的に変になろうとしてる」
というキーワードが生まれたのです。
つまり、あんな風なのは、すべてコンプレックスの裏返し。
そう決まったと同時に、じゃあ、本名をひとりだけめちゃくちゃ普通にしてやろうぜ!
ということで、「スズキ」に決定しました。
でも、ただ単にコンプレックスだけだとさすがに可哀想すぎない?
という心優しい女性スタッフの声もあり、そこで、
「音楽の歌詞は最悪、でも作曲センスは天才的!!」
という彼の唯一の能力が備わったのです。
そんな感じで彼の骨格が順々に決まっていきました。
しかし、その時点ではまだ、彼のあの独特の口調は決まっていませんでした。
じゃあ、あの口調がどうやって決まったのか?
そう、それはセリフを開発していく段階での出来事でした。
実はセリフを書くとき、「呼称表」というのを作成しまして、
誰かが誰かを呼ぶ時、どんな呼び方をするかというのをまず決めるのです。
例えば、教官アキラを呼ぶ場合、
ヨウスケ「アキラ、おまえ」
タクト「教官、アキラ、貴方」
ユゥジ「教官、お前」
ヒロ「教官、アキラさん」
ヒジリ「アキラ、オマエ」
という感じです。
で、次々決まって行く中、まともやカズキだけ止まってしまいました。
カズキは教官アキラをなんて呼ぶのか?
普通に呼ぶわけがない…。
と、そんな中、スタッフの誰かが「英語は?」と提案しました。
そう、「ティーチャー」です。
それを聞いた途端、みんな「それだ!」と確信しました。
これなら他と一緒じゃない上、変質的な個性が出る!!
ということで、
カズキ「ティーチャー、マイハニー」
彼の「英語化」がスタートしたのです。
こんな感じで、「カズキング」のキャラは膨らんでいったわけです。
そして、今では、永川さんによる「セリフ講座」ができるほどまでに
彼は成長を遂げました。
スタッフ一同、誕生当初はまさかこんな愛されるキャラになるとは
思ってもいませんでした。
(本当に愛されているのかは疑問ですが…むしろいじられてる?)
でも、カズキがいてくれたお陰で、いろんな意味でSRXの世界感に
“パンチが効いた”のは確かだと思います。
現在、この日本にカズキのファンの方がどれほどいるのかはわかりません。
しかし、彼がこれからも日々進化し続けていくことだけは間違いありません。
どうか、温かい目で見守っていただければ幸いです。
ではでは。