お待たせしました! ジャッジメント7の晩御飯はこれだ!
やれやれ……危ないところでした。一部、お見苦しい映像があったことをお詫びします。
ここは、どうやら屋上の様ですね。おっと、ここにも誰かいる様です……
もう、何も期待できませんが、一応声をかけてみましょう。
……あの、ちょっといいでしょうか?
な、なんですか、あなた達は!?
実に普通のリアクション、ありがとうございます。
我々は、テレビアシャヒの『突入!オフィスな晩御飯』の取材班です。
あなたも……その、ジャッジメント7のスタッフですか?
え、ええまぁ、そうです。アルバイトですけど。
あ、さっきから基地の中が騒がしいと思っていたら、テレビ番組が来てたんですか?
そういえば、前にユウノさんが応募したとか、そんなこと言ってましたね。
こんな暑い中、どうもご苦労様です。
な、なんと……話が通じます! ついに我々は、初めて普通のスタッフに遭遇したようです!
は、はあ……
お仕事中に失礼します。
は、はあ。仕事中といいますか、今はプールの片付けをしているところですけど……
ぷ、プールの片付け、ですか? ゲームクリエーターって、そんなお仕事まであるんですね。
いや、さすがはエンターテインメントの最前線。
いや、普通の会社にはないと思いますけど、ウチでは割と良くありますね。
さっきまでタチアナとユウノさん、それに七罪さんまで使ってたみたいですから。
まぁ、こう暑かったら、プールにも入りたくなりますよね。
って、ああ! 今言った3人は、ジャッジメント7のスタッフの事です。
は、はあ……その、スタッフの方がここでプールに入るんですか? その子供用のプールに?
そういえば先程、水着の女性スタッフもいましたが。
そりゃ、みんな入りますよ。だって、暑いじゃないですか?
視聴者の皆さん、残念なお知らせです。
一見普通そうに見えるこの青年もやはり普通ではなさそうです。
そういえば『突入!オフィスな晩御飯』って、アポなしで突然、会社まで押しかけて、結構、滅茶苦茶やるすごい番組らしいですね?
ネットでもやり過ぎって言われてるくらいですし、やっぱテレビの人って凄いですね。
え? あ、いや……今回の取材で、己の無力さを痛感していたところなのですが。
いえいえ。ジャッジメント7のみんなも、最近はすこし落ち着いて来ましたからね、あまり面白い番組にならないんじゃないですか? ほんと、申し訳ありません。
ところでもう、他のみんなの取材は終わったんですか?
そ、そうですね。取材は終わったというか、そもそも出来なかったというか……
なので、最後にあなたの晩御飯を取材させてください!
もう、普通に、コンビニのお弁当でも、オニギリでも、何でも構いませんから、普通にリポートさせてください!
……本当に、お願いします!
え? 僕の晩御飯ですか?
っていうか、今日はみんなに散々振り回されて、まだ、お昼ご飯も食べてないんですけどね。
あ、それでいうと朝ごはんも食べてないか?
何が何だか、自分でも分からなくなってきましたね……はは。
そ、そんな……あ、でもこれから食事されますよね?
そうですね……
そういえば、ユウノさんが『おっぱいなっぷるプリン』を作ってくれたので、これからそれを……
はい、スタジオにお返しします!
撮影を終えて

それはまさに敗北だった。
完全敗北という言葉しかない。
テレビ人として無茶ブリ王、厚顔無恥、傍若無人と様々な呼ばれ方をしていた私だが、今回ばかりは弁明の余地もないだろう。
ジャッジメント7という恐るべき素人集団に対して私には為す術がなかった……
恐怖すら感じたと言っても良いだろう。

そして今回の取材で何よりも恐ろしかった相手は、最後に屋上で出会った普通そうな青年だ。
彼は自分が特殊な状況に置かれており、その心がむしばまれているという事実にまるで気づいていなかった。
まるでこの東京の『闇』に汚染されてしまったかのような、異常を疑わない、異常までの普通さ。
長い間、街頭リポートをしてきた私も、こんな相手に出会ったことは無い……

何はともあれ、今後も私がテレビ人として活動を続けることができるのか? 続けていいのか? 様々な問題を提起された取材であったことは間違いないだろう。

某月某日 『突入!オフィスな晩御飯』リポーター 伴ごはん

©︎RED