某月某日。
東京は浅草の片隅で、一つの事件の幕がひっそりと上がろうとしていた……
女達の夜会わ始っていた。
……ということで、ジャッジメントガールズによる第1回パジャマパーティを開催するわよ!
おー! 待ってましただよー!
パーティ、パーティ、待ちかねたのだー! ターニャはもうパジャマに着替えて準備ばっちりなのだー!
ちょっと何なのよ突然、人を仮眠室まで連れてきて……パジャマパーティですって?
そうだよー、さあ、なっちゃんも早くパジャマに着替えようよー。
まるで意味が分からないのだけど。そもそもパジャマパーティって言ってもまだ7時を過ぎたばかりじゃない。
だってあんまり遅くなるとたーにゃんが眠くなっちゃうからさー。
こらユーノ、ターニャを子供あつかいするな、なのだー。今日はパジャマパーティに備えてしっかりお昼寝もしたし、コーヒー牛乳味のガジガジくんも食べたから、ちっとも眠くならないのだー。
おお、たーにゃん気合い入りまくりだねー。
にゃふふ、パジャマパーティといえば、世界三大パーティのひとつだからな。気合いも入ろうというものだぞー。
ということで、まだパジャマに着替えてないのは七罪だけだからさ、アンタ、さっさと着替えなさいよね!
ちょっと待ってよ。そもそも私はパジャマパーティだなんて聞いてないし、そんなくだらないイベントに参加するつもりは無いのだけど?
ああ、相変わらず面倒くさい女ね。だったらこれでどう?
きゃ! ちょ、ちょっとアサノ! いきなり変なものを服にかけないでよ……って、これビールじゃない!?
あ、ごめーん、手が滑ったわ。あら大変。そんなに服が濡れちゃったら、もう着替えるしかないわよね? ということでさっさとパジャマに着替えてきなさい!
……貴方って人は。シミになったらどうするのよ!?
あ、濡れちゃった服はゆーのがつけ置き洗いしておくからだいじょーぶだよ。さあ、なっちゃん、いってらっしゃーい。
はあ……なんなのよ、いったい。
女達の着替わ終っていた。
……それで、お望み通り着替えてきたけど、いったいどういうことなのか説明してもらえるんでしょうね?
だから、パジャマパーティだって言ってんでしょ? ちゃんと人の話、聞いてた?
ええ。聞いても意味がわからないからこうして尋ねているのだけど? そもそも、なぜ突然、パジャマパーティをしなければいけないの?
だって、突然やらないと、なっちゃんどこかに逃げちゃうでしょ?
そーなのだ。ナツミは相変わらず団体コードーが苦手だからな。こうしてサプライズパーティにしてやらないといけないからメンドーだぞー。
それは余計なお気遣いどうも。でも、どうして今日、急にパジャマパーティとやらをする事になったのかを聞いてるのだけど。
ほら、今日は珍しく変態が夜は外出するから帰らないって言ってたじゃん?
ああ、そういえば大切な用事があるとか言って出かけて行ったわね。まぁ、どうせくだらない用事だろうから気にもしてなかったけど。
それに、れーじくんは大学のレポートの締め切りがあるし、イルカさんは新作ゲームの発売日だから夕方には帰っちゃうって言うし。そしたら今夜は、基地になっちゃんとたーにゃんだけになっちゃうじゃない?
まぁ、そうね。でも、それが何か問題なのかしら? 存在感の薄い零時はともかく、尾張やイルカがいないなら作業に集中できて私としては助かるのだけど。
問題大アリクイなのだー! だって、今夜はターニャとナツミの2人だけだぞ? いったい誰がターニャのお世話をするというのだ? ナツミがお世話してくれるのか?
あなた、さっき自分を子供扱いするなと言ってなかったかしら?
それとこれとは別問題なのだー! ターニャは天才だからな、たとえ大人になってもお世話係は必要なのだぞ!
あっそ。でも、私はあなたのお世話をすることはもう二度とないと宣言したわよね? あの時の屈辱……死ぬまで忘れることはないでしょうから。
あ、あれはオネショじゃないのだ! 本当なのだ! 信じて欲しいのだ!
ええ、天才のタチアナさんが言うのならそうなのでしょうね? でも問題は、あの時いっしょに寝ていた私まで、オネショ女として、変態の慰み者にされたと言う事実なのよ、はは。
ああ、あの『オネ女事件』ね。うわ、なつかしー! っていうか、アレには流石のアタシも軽く引いたわよ、七罪。
だから、私はオネショなんてしていないから!
ターニャもなのだー!
あー、はいはい。そうよねー。2人ともいい歳してオネショはないわよねー。
アサノ……貴方って人は。
……ということで、なっちゃんとたーにゃんの2人だけだと、また、おねしょ事件が起こっちゃうかもしれないからさー。それでお姉ちゃんと相談して、このパジャマパーティを企画したんだー。
だからって何もパジャマパーティじゃなくてもいいじゃない。それに、そんなことをしている暇があるなら作業をした方がよっぽど有意義なのだけど……
そう、それよ! それなのよ!
は? それって何よ?
アンタのその『私は絵が描ければ幸せですぅ~』っていう残念なキャラ設定! それ、いい加減にやめたらどう?
ちょっと! 人の生き方をキャラ設定とか言わないでくれるかしら? そもそも絵を描くのが仕事である以上、当然のことじゃない。
あー、はいはい。偉い偉い、ご立派よ。でもね、七罪。アンタはどんなに絵を描いても決して幸せにはなれない。なぜなら、大切なものが欠けているからよ!
何の事よ?
アンタに欠けてるモノ……それは女子力なのよ! そして女子力をアップさせるにはパジャマパーティ! それが一番なのよ!
はあ? そんなの余計なお世話だし。そもそも私は女子力よりも画力の方が欲しいし。とはいえ、女子力のカケラもないアサノに言われるのは心外だわ。
なっちゃん、なっちゃん。お姉ちゃんはね、最近読んだ少女漫画で、女の子たちがパジャマパーティをするシーンにずっきゅーんって憧れちゃったみたいなんだ。だからちょっとだけでいいからつきあってくれないかなー。
はぁ……今どきパジャマパーティをする少女漫画ってどんな内容なのよ? しかも、それに憧れて真似をしてみたがるとか、本当に残念の見本みたいな女ね……
まぁ、それがお姉ちゃんだからねー。かわいーよねー。でも、ゆーのもなっちゃんとのぱじゃまぱーてぃ、楽しみにしてたんだよ。どーしても、ダメかなー?
はぁ……分かったわよ。もう着替えてしまったし、ユウノに免じて付き合ってあげるわよ。どうせ今日は急ぎの作業もないし……出来のいい妹に感謝しなさいよね、アサノ。
次項『女達の恋話わ終っていた。』へ続く